蛍を見た
タイトル通りです。
自分という存在が別の次元へとアセンションした気分の大学生。
蛍を見た。
今日はものすごく暑かったのできっと見れると思っていた。
曳山もあった。
二日目にもなったあの祭りはカッと照り付ける太陽によって余計に浮き上がった存在のような気がする。
正直言って今日の記憶はあるのかないのかあやふやな気がする。
夏っていつもそうだ。
皮膚を焦がし、アスファルトの臭いを持ち上げて、目を眩ませ、まるで紙船のように頼りない安定さの意識に縋ざるをえない、あの夏。
生も死もあるのかわからないぼやけた水性絵の具。
記憶というあいまいで不確かなものは信じられない、自分が一番信用ならない。
いずれ、きっとそうだと覚えているのは「暑そうだから蛍が出そうだ」ってことぐらいである。
そして蛍を見た。
二・三匹は見れた。
目が悪いせいなのか後ろの街燈が邪魔しているのか車のヘッドライトが乱すのか、全然わからないけれども、蛍がいたと思う。
彼らはか細い光をつけてはけして、つけてはけして。
今思い出そうとしても目の奥で何か視神経がイカレてしまったから蛍のようなものが見えたんじゃないかとか思うくらい、蛍たちはぼんやりと存在していた。
写真にも撮れなかった。
記憶を記録とするためにも写真は撮らなくちゃいけないのに、
「それは違うね」
って気持ちが撮ることを拒んだ。
なんで撮らなかったんだろう。
蛍かと思えば星空があった。
自分とこから見るよりもずっと沢山で明瞭な星がたくさん瞬いていた。
見ている光はずっと前のものらしい、分からんけど。
ごろりと何もしかずしてアスファルトに寝転ぶと、少しばかり痛いけれども、それよりもずっときれいな星空が自分の眼の限界まで映るから気にならない。
でもその中にも蛍みたいなやつもいた。
そいつもいるかいないか分かりづらいヤツだった。
自分もそうなのか気になった。